歯ぐきは、下げるだけでなく、上げられることがある
- 章貴 山田
- 10 分前
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前回、私がマイクロスコープに出会ったきっかけとして、歯周病治療の話を書きました。
同じ「歯周病を治す」ための治療なのに、それまで私が知っていた方法とは、向かっている方向が正反対だった。何が起きているのか、当時の私には理解できなかった——という話です。
今日は、その「方向が正反対だった」という意味を、もう少し詳しくお伝えします。
深い歯周ポケットを残さないために
歯周病が進行すると、歯を支えている骨や組織が失われ、歯と歯ぐきの間にある溝が深くなっていきます。これを「歯周ポケット」といいます。
深くなった歯周ポケットの中は、ご自身の歯みがきでは十分に清掃できません。歯科医院で使用する器具も届きにくくなり、汚れや細菌が残りやすくなります。
歯周病の基本治療を行ったあとも深いポケットが残っている歯は、浅い状態まで改善した歯と比べて、将来さらに悪化したり、失われたりするリスクが高くなることが、長期間の追跡研究でも報告されています。
そのため、「深い歯周ポケットをできるだけ残さない」という治療目標は、歯を守るうえでとても大切です。
これは、今も昔も変わりません。
違うのは、深いポケットをどのような方法で浅くするのか、という点です。
歯ぐきを下げて、ポケットを浅くする
私が当時学んでいた方法の一つは、深くなった歯周ポケットを浅くするために、歯ぐきの位置を下げる治療でした。
必要に応じて歯ぐきや骨の形を整え、深い部分を減らすことで、患者さんが歯みがきをしやすく、歯科医院でも管理しやすい状態をつくります。
この治療は理にかなった方法です。現在でも、歯や骨の状態によっては必要になります。
ただし、歯ぐきの位置を下げるため、治療後には歯が以前より長く見えたり、歯の根元が露出したりすることがあります。
歯周ポケットは浅くなっても、失われた組織を取り戻す治療ではありません。
失った組織を、可能な範囲で取り戻す
私がマイクロスコープを使った歯周病治療で見たのは、それとは異なる考え方でした。
深いポケットをなくすために歯ぐきを下げるのではなく、歯周病によって失われた歯の周囲の骨や付着組織を、可能な範囲で再生させる。
組織を切除してポケットを浅くするのではなく、失われた支持組織を取り戻すことで、ポケットを浅くしようとしていたのです。
さらに、歯ぐきをできるだけ傷つけず、その位置を保つように治療する。条件によっては、下がっていた歯ぐきの位置が回復することもあります。
同じ「深い歯周ポケットをなくす」という目的に向かいながら、一方は歯ぐきを下げ、もう一方は組織を再生させながら歯ぐきの位置を守ろうとする。
私が驚いたのは、この違いでした。
マイクロスコープだけで再生するわけではありません
ここで、誤解のないようにお伝えしておきたいことがあります。
マイクロスコープを使えば、それだけで失った組織が再生するわけではありません。
再生療法が可能かどうかは、骨の失われ方、歯の状態、炎症の程度、歯みがきの状態、喫煙、全身状態など、さまざまな条件によって変わります。手術に使用する材料や、治療後のメインテナンスも重要です。
マイクロスコープは、治療する場所を拡大して確認し、組織をできるだけ傷つけず、細かな操作を行うために使用します。
しかし、それは再生療法を成立させるための要素の一つであって、魔法の道具ではありません。
すべてを元通りにできるわけではない
歯周組織再生療法は、すべての歯に行える治療ではありません。
歯周病の進行状態や骨の欠損形態によっては、十分な再生が期待できない場合があります。
治療をしても、失われた組織を完全に元通りにできるとは限りません。歯ぐきの位置がどこまで回復するかも、患者さんごと、歯ごとに異なります。
再生療法ではなく、従来の方法を選ぶ方が適切なこともあります。
それでも、私はこの治療について知っていただきたいと思っています。
なぜなら、歯周病治療は、歯ぐきを下げてポケットを浅くする方法だけではないからです。
失われた組織を可能な範囲で取り戻し、歯ぐきの位置をできるだけ守りながら、歯を残すことを目指せる場合があります。
それが、私がマイクロスコープを使った歯周病治療に出会ったときに感じた驚きでした。
もし歯周病や歯ぐきの下がりが気になっているなら、まずは、ご自身の口の中で何が起きているのかを詳しく調べてもらってください。
どの組織が、どのように失われているのか。その状態に対して、どのような治療が考えられるのか。そして、どこまでの改善が期待できるのか。
それを知ることが、治療を考える最初の一歩になります。
参考文献
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